(53)社交(しゃこ)タン(たん)とアルタンなどの比較、ペアダンスの研究

ダンス技術
アルゼンチンタンゴのステキで華麗な足ワザ

暴走族の車高が低い自動車をシャコタン(車高短)と言ったりしますが、それの事ではありません。社交ダンスのタンゴの事です。また、代表的な競技種目のワルツ、タンゴを短縮して、ワルタンといいますが、そうではなくて、アルタンつまりアルゼンチンタンゴの事です。今回は少し、社交ダンスのタンゴとアルゼンチンタンゴを比較研究してみましょう。

私達の競技会のホールドがドンドン広くなること。そして、逆にアルゼンチンタンゴのホールドは狭くて、相手の方に行くことなどについて、少し語りたいと思います。現在、特にWDSFの競技会等そうですが、もう踊り初めのスタートの時から、女性は、コントラチェックの様なピクチャーポーズをしているくらい、後方にそっくり返ってシェイプ、ホールドしています。もちろん、普通の生徒さんに対していきなり、そのようなひっくり返っているホールドでは教えないと思いますが、多くの先生は競技会選手の出身ですから多少なりとも現在の競技会のトップレベルの選手たちのホールドを参考にしてレッスンをされている事と思います。そうするとこのようにどんどん進化したスタンダードのホールドを見ると、一体これからどういう風に、生徒さんにホールドの仕方をレッスンしたらいいのかと多くの先生は迷ったりすることもあると思われます。特にメダルテストなどのきちんとした場所でのダンスにおいて、どのぐらいのシェイプを、特に女性にさせるのか、また男女はどのくらい離れるのか?多くの先生は考えてしまうでしょうね。さらには、もっと精密さが要求される競技会に於いては、これから、どのくらい、もっと頭部や肩部を離したり、くねくねスウェイをつけまくるような踊りを教えるべきだろうかと考えてしまいますね。ジルバやブルースならば、パーティーダンスですから、男女は何となく向かい合うような感じで、会話を楽しみながら踊っても変ではありませんが、競技ダンスともなると、わたくしたちの社交ダンスは今現在、男女はドンドン離れる方向に行っているみたいですね。やはり、特にトップ(ホールドの上部や頭部)が離れて組むという事は、シェイプを大きく雄大に見せれますものね。紅白戦とかミックスデモンストレーションやソロデモンストレーションなどに生徒さんと出る場合はどうしても見せるダンス、つまり競技ダンス的なレッスンを完成形として、レッスンするしかない訳ですけども、近い将来もっと一般的に社交ダンスを楽しむようなレッスンをする際にはどういう状況で教えたらよいのでしょうかと、真剣悩みます。

こういう社交ダンスに対してアルゼンチンタンゴは、本当に正反対で、男女が密着すると言うか、ビックリする様なホールドをします。 アルゼンチンタンゴの特徴は、このアブラッソ(イタリア語で『抱擁』)という抱きしめ合うようなホールドもさることながら、社交ダンスには全くない、豊富な足技が特徴で、どちらかと言えばラテンの踊りを見るような感じです。たくさんの足技がありますので、イラストで解説しておきます。長く社交ダンスをやっている人ならば1度くらいは、アルゼンチンタンゴやサルサなどの他のペアダンスを勉強してみるのも有意義です。

ホールドの仕方からも判る様に、社交タンゴとアルタンは色々な意味で共存、両立すると言うよりも、反発するような感じが多いのです。先生としても、マーケットを開拓するという意味で、どうしてもお互いに相手を(けな)す、こき下ろす様な状況になり、例えば、ホールドに関して言えば、社交ダンスの先生はアルゼンチンタンゴの組み方に対して、『そんな風にチークダンスみたいに組んで踊っとったんでは、男女がもつれちゃって、何もできないよ!!ちゃんときちんとまっすぐ立って、半分ずれてホールドし、女性は男性から離れるようにし、シェイプする事によって、遠心力で回転とかできるんだよ。』と言います。ところが、アルゼンチンタンゴの先生は社交ダンスの様にホールドすると、『そんな風に全然別々の方向を向いて組んで、どうやって踊るの!しかも男性も女性もひっくり返っているようなバランスで。ちゃんと男性が女性の方に意識を向け、女性も男性の方に意識を向いて組まないとダメじゃないの!』とおっしゃいます。どっちも主張している事は正しいですね。

わたくしが若い頃、アルゼンチンタンゴを勉強し始めた頃に、名古屋市千種区の“エルシド”(メルパルク近く)というアルゼンチンタンゴホールに踊りに行った時に、20歳代の美しく、スタイルのとても良い銀行員のお姉さまがいらっしゃっていて、その時は水着の様な、半分お乳が出ているような衣装を着ていらして、こちらが恐縮して、腰とか腿を引くと、『もっとくっつけて踊るのよ』と言って、ご自分の大きな胸を僕の胸にグイっと押し付けられました。顔もキスができるくらいに唇を近くに接近させられて、本当にビックリしました。その人のタンゴシューズのヒールは、10cm以上のピンヒールで豹柄でした。アルゼンチンタンゴをやる人はきれいな美人の人でSの人が多いのかなと思って、とても嬉しかった一生忘れられない思い出があります。一緒に来ていたわたくしの友人の社交ダンサーのおじさんも、僕のあとにその女性と組んでもらって『生きてて良かった~~』と感激して、泣いていました。ことほど左様に、アルゼンチンタンゴ界では、ホールドをアブラッソ(イタリア語で『抱擁』)と言って、抱き合って『お互いを感じるように』などと講習されます。深く抱き合って、相手を感じるようと言いますが、何か宗教的な感じがしないでもありません。悟りが浅い筆者のような存在は、そんな事をされると、興奮してドンドンHな方向に流れて行って、非常に困ります。社交ダンスの様に、どちらかと言えば、下半身をくっつけ合って(これはこれで深く考えると怖い……)上半身を離すのと対照的に、アルタンの場合は、上半身をくっつけ合って、(頭部とか顔の内のどこか一ヶ所を接触させる組み方も、正式にはほぼ一般的)、むしろ足ワザのために、下半身はやや離してホールドします。このため、見学や入門をしようと思って、アルゼンチンタンゴのスタジオを訪れた女性などは、いきなりそんな組み方を先生からされると、『恋人やボーイフレンドならともかくも、知らない男性や、脂ぎったおじさんとそんな組み方したら、気が狂っちゃう!絶対無理々々!』とやめて帰っちゃう人も多いと聞きます。(わたくしとか男性は、思いがけない幸運に喜び狂いますが…)

更に、筆者の様に、多くのペアダンスを経験しようと思って、その世界に少し修業のために、パーティなどに潜入した際に、社交ダンス経験者だとばれる場合があります。なるべく悟られないようにはしているのですが、やはり卓越した技術がにじみ出るのでしょうか?奴らは(あっ、失礼、アルゼンチンタンゴの方々は)、そうするともう鬼の首でも獲ったように、やれ『ホールドを張り過ぎる』とか『肘が高い。もっと低くして』とかドンドンしつっこく攻撃してきます。どちらかと言えば、社交ダンスの世界でうまくいかなかったから、アルゼンチンタンゴの方に流れてきたと考えられ、低く下に見られるので、バレそうになっても『い、いやいやいやいや、しゃ、社交ダンスのタンゴなんて、全然知らないよ。こ、コントラ・チェックとかCBMPなんて、う、生まれて以来全く聞いたこともあ、ありませんよッ!』とここは完全否定でとぼけましょう。

さて、ワルツやタンゴ、ルンバなどはどうしても、競技的なホールドや動きのレッスンが行なわれがちですが、ジルバやマンボ、ブルースなどは、初心者用にごく普通の立ち方、多少離れた組み方などで進行するので、前述の、競技会的な離れ方のワルツ、タンゴとか、アルゼンチンタンゴのような抱擁的密着で気が狂う事は無いのですが、では他のペアダンスはどうかといえば、多くの人口があるサルサなどは、そういう点では、一番カジュアルで、自然で良いのではないでしょうか? サルサにはセットになっているダンスで、バチャータ(ルンバの様なSEXYなダンス)とメレンゲ(わたくしが思うには、ジルバよりも簡単で、ダンス初めての人が、最も短時間で習得可能な、超簡単なペアダンス)があります。次回は、これらのダンスを少しお勉強いたしましょう。

社交ダンスのみをやっている人が、社交ダンスの知識だけで、ほぼ理解できる

お勧めユーチューブのダンス講座 

❶ アルゼンチンタンゴ界の大御所 ユージン&アリサ先生の『アルゼンチンタンゴ講座・初級編』 https://www.youtube.com/watch?v=n84WNR81xQ8など…

❷『ちょこっとアルゼンチンタンゴが踊れたら…』(第1回~第8回)入門編詳密

https://www.youtube.com/watch?v=KLrfI5wSdV4など…

❸ オズワルド&モアラ先生のアルゼンチンタンゴ講座(第1回~第36回 英語ですが、簡単な解説なので聴きやすく実に素晴らしい)

  https://www.youtube.com/watch?v=NS46DRBIweg など…

❹ 『もっとサルサが踊れたら…』(第1回~第20回)サルサ初・中級の細かい解説

❺ 『もっとバチャータが踊れたら…』(第1回~第10回)バチャータの初・中級

  https://www.youtube.com/watch?v=Hn3tfxEGOvs など…

❻ 『ちょこっとメレンゲが踊れたら…』(第1回~第8回)メレンゲの初歩の解説

  https://www.youtube.com/watch?v=my06GN6Y6CE など…

❼ 中国系アメリカ人?トッド先生の『Advanced Salsa Pattern Tutorial 3.31.11 – Neck Check Hand Toss (On2)=上級サルサステップレッスン3.31.11-首止めハンドトス』両腕ホールドでくるくる回転する足型の解説などを、カッコよく繊細なトッド先生が、ステキに解説。上級はこんな感じだよというのが判る動画。

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