(207)死んだ恋人は日々に疎(うと)し《その3=最終回》

世の中の出来事

わたくし達が住んでいる、下世話(げぜわ)なこの世の中ではなく、もう格上の天上の世界に行ってしまっているので、そういう意味では急に自分よりも出世して上に行ってしまった感じがします。今わたくし自身が例えば大学生で、彼女は高校生のように年下だったのに、急にもう卒業して会社に勤務する社会人になって、わたくしの大学生としての身分より、社会的に先輩になってしまったような、そんな感じが特にわたくしの場合強くします。羨ましいというと変ですが、羨ましいような、出し抜かれて寂しい様な、もちろん深い悲しみがある訳ですけれども、深い悲しみを持ったとしても、彼女は帰ってくる訳ではありませんので。 特に強く、そんな感じを抱(いだ)きます。

異次元の存在になってしまったというか、もう二度と言葉を交わす、この世で、交わることのないような存在になってしまったのかと思います。交わると言っても別にセックスするという意味ではありませんけれども、要するに同じ次元の世界において、もう普通に同じ対等の会話をしたり、握手したりできないのかと思うのです。

例えばわたくしがいつか死んだとすれば、それはそれで、彼女がもう生まれ変わって、全く別の世界で過ごしているのでなければ、『やっとこっちの世界に来たね』と言って、彼女がひょっとしたら私を迎えてくれるかもしれませんが、その時であればわたくしも霊魂となっているので、もう羨ましいことはなく、また“対等”に戻ったと感じる事でしょうね。でもわたくしは悪いことばっかりしているので、地獄に堕ちて違う世界に行くしかないのかもしれませんが……

今は前記の如く、その時こそまた同じ存在として同じ魂のレベルというか、同じ次元に行き(生き)、そして彼女を抱きしめることができるかもしれないと……そんなことを願っています。そうして、いつも声掛けをしています。『そっちの生活はどうですか? 暑くない、寒くない? あっ、そうか…もう肉体は無いのだからそんな感覚はないかな? どっか体の具合悪くない?しっかり健康管理をせないかんよ…あっ、と言っても、もう肉体は無いから、関係ないんだね。どうも…そちらの霊魂の世界の事は不慣れで、どう話しかけたらいいのか苦手だね。お金とか困ってないかな? でもそっちは通貨経済かどうか判んないもんね。それに今は働いてるの?それともちょっと休憩してる?みんなあっちの世に行ったら、最初は休憩するのかな? それから……聞きにくいことだけど…… 誰か好きな人ができていない?まあ、でも…そちらでまた×美が幸せになるなら、それも良いかも? とにかく健康に注意して調子を崩さないようにしてよ。 時々は……会いに来てね……というか、いつもそばにいてね。 たまに夢に出てきてね……』

(この項はこれで終了です。いつもご愛読、まことにありがとうございます‼)

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